矯正治療後の管理の重要性について (再編集版)

文章が長くなりそうだったので、僕の診療所のホームページから抜粋した。面白いと理解できる人がいるのかな?(^_^;)

以下は当院における術後管理に関する記載である。

皆さんは歯列矯正とは、歯並びが綺麗になればそれで終わりだと思っていませんか? それは無いとしても、リテーナーを一定期間だけ入れていればOKだとは思っていませんか?

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せっかく何年もかけて、歯並びを整えても術後にきちんとした管理をしなければ、かなりの確率で歯並びは崩れてしまいます。

 いわゆる『後戻り』と呼ばれる現象が起こるのです。
では、どうして後戻りは起こるのでしょう?
 歯は歯槽骨という骨によって支えられています。矯正装置によって歯に力を加え、歯によって歯根膜(歯と骨の間にある隙間)が圧迫されると歯槽骨が吸収(無くなっていく現象)していくという不思議な現象が起こります。
 この体の特性を利用しているのが矯正治療なのです。
 歯を支える骨が無くなっていきますので歯が移動できるという訳です。ですが、この特性を利用して歯が整ったとしても、一旦なくなった骨がすぐに出来てくる訳ではありません。
 歯から骨には繊維が一杯くっ付いていて歯を移動させると、この繊維が伸びた状態になり元の位置に引き戻そうとする力が働きます。ですから、良い歯並びを作ったら新しい骨が出来るまで、しっかりと固定しておく必要があるのです。
 我々矯正医はこの固定を「保定」と呼んでいます。保定期間は一般的に歯を動かすのに掛かった期間と同じ期間が必要と言われ、殆どの医院が取り外しタイプの保定装置(リテーナー)を使用しております。しかしながら、長年の経験でこれだけの術後対応では歯並びが崩れてしまう患者様を目の当たりにし、当院独自の術後管理システムを構築するに至りました。
これにより、以前と比べると随分後戻り率を減らせるようになっております。歯を並べて術後はリテーナーを渡して経過を見るだけ。崩れればまた再治療すればいい!でも、果たしてどれだけの患者様が再治療を望んでいるでしょうか?一旦手に入れたかけがえの無い素晴らしい歯並びは、これを死守する!というのが当院の考え方です。
また、歯並びを治しに当院に来られた方であっても、歯のことだけを考えていては治療は成功させられません。一人の患者様の為にいろんな科が知識を出し合って治療に当たる必要があると私は考えています。
 それでは、当院の術後管理システムについてお話していきましょう。まず、矯正治療によってなくなってしまった骨がどの程度再生されてきているのか知る必要がありますので「ペリオテスト」という装置で歯の周りの骨の再生具合を科学的に調べていきます。
 
ぺリオテストの詳細(動画あり)は「矯正治療後の管理のあり方」に記載


 これにより歯並びが崩れてくる前にある程度現状を知る事が出来ますので、先手を打った対策を講じる事が出来ます。一見綺麗な歯並びで一般的な術後管理では見落としがちな問題もこの検査をする事により発見出来るようになりました。

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 骨の再生の妨げにはいくつもの要因が考えられますが、まずは①歯周病の有無、次に②一見綺麗な歯並びに見えても微妙に部分的な強い接触状態になっている場合、それから③歯ぎしり等の悪い癖のある人で起床時の顔面疲労や頭痛のある人は特に要注意(リテーナー以外にナイトガードという装置で噛み合わせを高くするか場合によってはスプリントという装置で咀嚼筋の過緊張を取る必要に迫られることもある。骨の再生を阻害するばかりか、放置すると咬合や顎関節の崩壊に繋がりかねない)、④リテーナー自体が悪い影響を与えている場合[リテーナーを入れたまま噛んだり(ベッグタイプは大丈夫)、横着な(誤った)使い方で変形したリテーナーを使っている時、口内炎などが起因してリテーナーを浮かせて使用してる場合は骨の再生を阻害するという以前に、しっかりとした固定がなされてないため歯は動いてリテーナーが入らなくなる。]それから⑤全身的な関与も考えられます。
 特に私が注目しているのは女性ホルモンのバランス異常のある人です。生理不順・妊娠・授乳中の女性など、いずれの場合も歯の周りの骨の再生がなかなか起こってくれません。女性ホルモンのバランス異常により、骨の再生が阻害されている疑いのある方は、婦人科に協力頂いて連携を組んだ治療を行っております。
 しかしながら、ぺリオテストを用いて骨の再生をチェックしていながら問題が発見されなくても、歯並びが崩れてくる場合があります。こういう方はどんな方かと申しますと、いわゆる鼻気道障害(鼻づまり・扁桃腺の腫れ)により口呼吸している人、それに伴い舌の位置異常や唇・頬などの筋力低下が引き起こされ、これが悪い矯正力となり歯並びが崩れてしまいます。なかには鼻気道障害は無いのに舌の位置異常や唇・頬などの筋力低下の認められる方も居られますし、片方だけで咬む癖いわゆる片咬み癖により筋力バランスが崩れ、こういったことが原因で歯並びが崩れてくることもあります。
 鼻気道障害のある方については、耳鼻科やアレルギー科と連携した治療が必要となります。歯列を取り囲む舌や口腔周囲の筋肉の調和こそ術後の安定に重要でありこれは天然の矯正装置の様なもので、このバランスまで考えていかないと本当の意味で歯並びは守れないと私は考えます。ですから当院では「ビューティーヘルスチェッカー」という装置を用いて筋力を測定したり、筋電計という装置を用いて筋力バランスをチェックしていくという術後管理も行っております。

 

 

 舌の位置異常にはウェッジプレート(舌を上に持ち上げる装置)やTTPという装置(舌出し癖のある人が舌を出した瞬間に装置が落ちる仕組みになっているので舌が出た瞬間を自覚できる点で優れており装置が落ちないよう発音練習していく)を用いてその改善を図り、筋力低下の認められる方には「スリムマウスピース」「パタカラ」という様な装置を用いて筋力強化トレーニングを行っていただいています。また、ペリオテストを用いた私の研究で前歯の裏側を6~8本ワイヤーで完全に固定した方が、保定効果が高いことが明らかになっておりますので、当院では、すべての患者様に対して、この固定をした上でリテーナーを使用して頂くという2重のガードで歯並びが崩れぬ様、万全の態勢を取っております。裏側の固定装置に関しては外側からは全く見えませんし、ほとんど違和感もありませんので術後の対処法としては、これがベストだと考えます。 
 矯正治療で手に入れたかけがえの無い綺麗な歯並び、そして素敵な笑顔、これを守り抜いていくために、これからも患者様に良かれと思う事には無限の努力をしていきたいと思っております。少しでも術後管理の重要性がご理解頂ければ幸いに存じます。  

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矯正歯科の世界で、その名を知らない人はいないくらい有名な先生の一人に近藤悦子先生がおられますが、この方の口癖が「Muscle Wins」です。つまり歯は筋肉に囲まれており、歯と筋肉では筋肉の方が影響力が強い(歯は筋肉の力で動いてしまう)と言っているのです。
 

実際、どの部分の筋肉が強いかで歯の位置は決まります。

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筋肉によって変化した歯列
 

 

態癖によっても歯列は歪む。

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歯列を乱そうとする過酷な環境からどうやって守るか?

考えられうるいろんなことを駆使して歯列はやっと安定するのです。

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ダウン


 
見えないよう前歯の裏側をワイヤーで接着し永久固定する。

抜歯ケースは抜歯スペースができやすいので小臼歯まで固定する。

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非抜歯ケースでは犬歯まで固定する。
 

永久固定するだけでも固定されてない臼歯部の動揺は減少し安定が得られやすくなることが、ぺリオテストを用いた僕の研究で分かった。

学会で発表してるところ

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叫び

前歯の裏側を永久固定して歯列の安定を高めた上で、さらにその上からリテーナーでダブルガードする。リテーナーは歯の周りの骨の再生状況を見た上で使用時間を減らしていくが、寝る時使用まで減らしたら、それを極力ず~~っと続けた方が賢明である。以前、10年ぐらいリテーナーを使用して崩れなかった患者さんたちに対して卒業という形でリテーナーをしない方向で臨んだ時期があったのだが、次の来院時には全ての患者さんでリテーナーが入らない状態になっていたそんな苦い経験をしてから、「歯並びを崩したくなかったら少なくともリテーナーの寝る時使用は続けた方が良いですよ!」と言うようになった。誠に残念ながら、リテーナーを何年続けようが歯は固定をやめた途端動き出す というのが現実のようであります。

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最近では、違和感が少なく見かけも優れたリテーナーが作られるようになった。

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矯正歯科領域で考えられうる対策を講じた上で、耳鼻科や婦人科の協力が得られれば、かなりの確率で歯列が崩れるのを防ぐことができる。

たまに、リテーナーも永久固定もしないで歯並びが崩れない患者さんに出会いましたが、こういう方は口腔周囲の筋肉バランスの調和がとれていて、上記の(全身的な問題も含めて)問題も全く無い本当に凄い方だと僕は思います。あなたは歯並びが恒久的に崩れない環境を持っている自信がありますか?不正咬合になっていくには必ず原因があり、その原因を広い視野に立って考えながら治療していくことが大切になります。それは術後に関しても言えることで、悪い因子を残したまま歯列(歯並び)が恒久的に安定するなんて有り得ないのです。

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せっかく頑張って頑張って手に入れたかけがえのない歯並び、いい歯並びはスマイルトレーニング(表情筋トレーニング)の効果を出やすくする。 素晴らしい歯並びがもたらす最高の笑顔は、身も心も健康にする。だから、大切にしたくなるような笑顔を身につけた人は必ず幸せな人生を送れると僕は信じています。 

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ビックリマーク


 

素晴らしい歯並びが作る素晴らしい笑顔は、かけがえのない財産

このかけがえのない財産を守れるかは術後管理の在り方にかかっています。

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今日も口角の上がった優しい笑顔で素敵な一日を!(^∇^)


なお

長文ブログで疲れた後は、マイわんこ その名は「武蔵」で癒されて下さいな

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お疲れ様でした~ (*^▽^*)

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