見えない矯正治療法として誇大広告されがちな舌側矯正、その知られざる欠点をお話しようと思う。
近年、NASAで開発されたチタン合金により矯正治療は飛躍的な進歩を遂げた。
このチタン合金は超弾性ワイヤーと呼ばれ、どんなに酷いガタガタでも以前ほどの痛みを伴うことなくブラケットに入り込んでくれ、なおかつ以前のようにワイヤーにループを入れて弾性を確保する必要がなくなったため、口腔内の衛生状態を悪化させやすい心配も無くなった。
この素晴らしい性能を誇るチタン合金の特性を活かせないのが舌側矯正なのである。
裏側に装置がついているので外側からは全く装置が見えない。
だから患者さんは飛びつく
だけど、歯の裏側には舌がある。患者さんの想像を絶する違和感を味わう可能性を頭に入れておかなければならない。僕の患者さんで、今まで1番装着時間が短かった人で、たった数時間。「私が浅はかでした 大変申し訳ありませんが外して下さい!」と再来院されたことがある。
舌側矯正を希望してるそこのあなた、それなりの覚悟をしなさいね
次に最も重要なこと、先ほどお話した超弾性ワイヤーの素晴らしい特性を活かせないのが舌側矯正である。
ここで見て頂きたい。 下手な絵で申し訳ないが・・・・・
舌側(裏側)矯正のブラケット間距離は裏側にある分、アーチが小さくなる関係で頬側(外側)矯正のブラケット間距離より短くなる。
このことが何を意味するか?橋げたの距離を詰めた場合と離した場合、どちらの橋がたわみやすいか考えると解りやすい。
ブラケット間距離が狭くなるとワイヤーが硬くなり、超弾性ワイヤーの最大のメリットである柔らかくて優しい力がかけられない。要するに頬側(外側)の矯正の倍近い矯正料金を払う割には違和感が強く性能も頬側の装置に遠く及ばない。術者にとっても見えづらくアバウトな治療になりやすい。見えない意外メリットが見当たらないのでアメリカでは全く普及していない。
この事実をちゃんと理解したうえで、それでも舌側矯正がいいと思える方がやったらいい治療だと思う。
ちなみに僕の診療所で、過去から現在に至るまで勤めた全ての衛生士が矯正治療をしたが、舌側矯正を希望した衛生士は誰一人としていない。
僕としては、プロの真似をするのが1番だと思うのだが、皆さんはどのようにお考えになるだろうか?